神風特別攻撃隊とは何か【其の参】特攻第1号

特攻第1号 第一神風特別攻撃隊「敷島隊」関行男隊長

神風特別攻撃隊関中佐顕彰額

特攻第1号

関行男海軍大尉(戦死後2階級特進で中佐)は、大西瀧治郎第一航空艦隊司令長官に直接に任命された「神風特攻第1号」の英霊である。
関海軍大尉は海軍兵学校出身者であった。
当時の海軍では、「海兵」が「予科練」より本流であるといった意識が強かった。海軍は是が非でも「特攻第1号」の名誉を海兵出の関大尉に取らせたかったのではないかと推察する。

神風は「かみかぜ」と読まれているが、正しくは「しんぷう」である。

隊名も国学者本居宣長の「敷島の大和心をひととえば朝日に薫る山桜」から「敷島」・「大和」・「朝日」・「山桜」の名前が冠せられた。
其の第一番には海兵出の関大尉が指名されたが、当時はまだ「やる」「やらない」は選択出来る余地があった様だ。
しかし、司令長官自らの指名に否と言う軍人、況してや海兵出の関大尉に「否の言葉」など言える筈もなかったであろう。
新婚生活を始めたばかりの妻を残して、敵艦に特攻を仕掛ける心中はいかばかりか?
その心情を想うと涙が自然と湧いてきてしまう。

海軍の教育の敢闘精神の賜物であろうか・・・
自分が行くしかないと覚悟の上の出撃であったのであろうか・・・
最後の覚悟は、残る妻を敵から守る為と、割り切る一点の出撃で有ったのだろうか・・・

敷島隊の突入で爆沈する

第一神風特別攻撃隊「敷島隊」関行男隊長は、大正10年(1921年)生まれ。愛媛県西条市出身で、海軍兵学校70期卒業。
江田島海軍兵学校から、霞ヶ浦航空隊へ進み、航空教官となた。昭和19年に大尉昇進、台南航空隊分隊長を経てルソン島マバラカット基地201空飛行分隊長になり敷島隊隊長に志願し、昭和19年10月25日、空母セントロー(USS St. Lo)撃沈。
最終階級二階級特進海軍中佐。

貧しさから海軍兵学校に進むしかなかた優秀な人材にも拘らず誠に以て残念である。
関隊長と共に散華された敷島隊五軍神(中野磐雄少尉・谷暢夫少尉・永峰肇曹長・大黒繁雄曹長)は楢本神社に祀られ、慰霊の碑が建てられた。毎年10月の命日には、盛大な慰霊祭も行われている。

敷島隊五軍神【関行男隊長・中野磐雄少尉・谷暢夫少尉・永峰肇曹長・大黒繁雄曹長】

遺書
【母・サカエ 妻・満里子の両親宛】
父上様、母上様。

西条の母上には幼時より御苦労ばかりおかけ致し、不幸の段御許し下さいませ
今回帝国勝敗の岐路に立ち、身を以って君恩に報ずる覚悟です。
武人の本懐此れにすぐるものはありません。
鎌倉の御両親に於かれましては、本当に心から可愛がっていただき 其の御恩に報ゆる事も出来ずに行く事を御許し下さいませ
本日 帝国のため 身を以って母艦に体当たりを行い 君恩に報ずる覚悟です
皆様御体大切に

【妻・満里子(新婚三カ月)宛】
満里子殿 
何もしてやる事も出来ず散り行く事はお前に対して誠にすまぬと思って居る 
何も言わずとも 武人の妻の覚悟は十分出来ている事と思ふ 御両親様に孝養を専一と心掛け生活して行く様 色々と思出をたどりながら出発前に記す
恵美ちゃん坊主も元気でやれ

【教え子へ宛】

教え子へ

 教え子よ散れ山桜此の如くに

霞ヶ浦航空隊の教官時代の教え子達に対してのメッセージであり、全軍に布告された放送で伝えられた。

神風特別攻撃隊敷島隊隊長関行男 神風特別攻撃として昭和19年10月25日1045スルアン島の30度30浬に於いて中型空母4隻を基幹とする敵艦隊の1群を捕捉するや必死必中の体当たり攻撃を以て航空母艦一隻撃沈同一隻炎上撃破巡洋艦一隻轟沈の戦果を収め悠久の大義に殉ず 忠烈万世に燦たり 仍て茲に其の殊勲を認め全軍に布告す

昭和19年10月28日 連合艦隊司令長官 豊田副武

兵学校4号生徒時代の関行男中佐

死後、家には「軍神関行男海軍大尉之家」の柱が立てられたが戦後になると、米軍の方針とは言え世間の目は一変する。軍神は地に堕とされ、戦犯のように批判の対象となってしまった。
「軍神の母」と持ち上げていた人々からは冷酷な仕打ちを受け、更に遺族年金が日本海軍解隊とともに廃止され、生活も困窮する境遇となった。
その後、中学校用務員となったが、昭和28年に、その用務員室で寂しい生涯を終えた。
関家は断絶し、世間の冷たい風は、母サカエの唯一の望みであった「行男の墓」を建てることさえも許さなかった。
家族の受難の時代が訪れてしまった事は誠に、誠に残念であると愚考する次第である。

悪党 

楢本神社
奈良朝以前に、西条の地名の発祥である西条荘守護神として創祀された。主祭神は大国魂神。
昭和50年、神風特攻隊「敷島隊」関行男中佐の慰霊碑を建立。昭和54年、「大東亜戦争・特攻記念館」が落成。
【住所】愛媛県西条市大町1138

・神風特攻記念館
・零戦の手動補助ポンプ
・250kg爆弾
・戦艦「大和」主砲弾
・戦艦「三笠」主砲弾